2023年10月開始!インボイス制度に向けて、準備は進めていますか?

      2022/08/26

2023年10月から開始するインボイス制度(適格請求書等保存方式)に向けて、
多くの企業が準備を進めています。
今回はインボイス制度とはどのような制度なのか、その目的や開始時期、
仕入税額控除の仕組みについての確認や、企業が対応すべきことや電子化の必要性について
解説していきます。

インボイス制度とは

「インボイス制度」をひとことで言うと、
「適格請求書」という証跡によって消費税の仕入税額控除を正確に計算しようとする制度です。

消費者から預かった消費税については、事業者が預かった消費税と支払った消費税を相殺して、
預かった消費税の方が多ければ国や地方に納税しています。

ただ、すべての事業者が消費税を納税しているわけではありません。
「免税事業者」といって、消費税の納税を免除されている事業者がいるのです。
そうすると、消費者が払った消費税が納税されていないことになります。

そこで今回のインボイス制度では、適格請求書に対して支払ったものの消費税のみ、
事業者は預かった消費税と相殺できるという仕組みに変わります。

インボイス制度への企業の対応としては、
売り手側は、適格請求書の要件を満たす請求書を発行する義務と、その写し保存方法の
厳格化などが求められます。

その上で、忘れてはならないのが電子帳簿保存法改正への対応です。
インボイス制度では、経理担当者は請求書の発行会社は課税事業者なのか免税事業者なのか、
受け取る請求書が「適格請求書」なのか確認が必要になりますが。
これらを都度「紙」の請求書等から判断し処理するのでは業務効率の低下が懸念されます。

そのため、インボイス制度では「電磁的記録での請求書等の提供が可能」となりました。
これはデータを電磁的に保存する方法でも消費税法が定める請求書等として認めることを
意味します。
電子帳簿保存法ではこの電磁的に記録(保存)する要件を具体的に定めています。

電子帳簿保存法で規定されている電子取引データの保存義務は、
当該データの書面による保存の宥恕(ゆうじょ)措置期間が設けられ、
書面による保存については、2023年12月31日まで容認されることになりましたが、

インボイス制度の対応を電子インボイスで行う場合には、
電子帳簿保存法の対応を検討する必要がありますので、
2023年10月までには社内の電子化の検討を進めておく必要があります。

インボイス制度導入の背景

インボイス制度は、日本で聞きなれない言葉ですが、
主要諸外国では標準税率と食料品等に対する軽減税率が混在する付加価値税(Value Add Tax)
の根幹をなす制度として定着しています。

売り手側(商品やサービスの提供者)が、買い手側に対して発行する請求書等に適用した
税率とその税額を掲載して伝える仕組みで、
申告納税はこの請求書等に基づいています。

日本の消費税はこれら諸外国の制度を参考に、課税負担の公平性を高める「間接税」として、
1989年に創設。
税率は当初の3%から1997年に5%、2014年に8%と引き上げられ、
2019年には主要諸外国のように2段階(標準税率で10%と軽減税率で8%)となりましたが、
解釈に難解な部分もあることや、業種によっては非常に複雑な計算が必要なために
膨大な手間を要しています。

「インボイス制度」は、買い手側が誤って10%で仕入れたものを8%で計算したり、
売り手側が誤って過大な納税をしてしまうなどの間違いが起きないように、
インボイス(請求書)に基づいて消費税を計算しようというものです。

インボイス制度の概要と目的

「インボイス制度」は、正式名称を「適格請求書等保存方式」と呼び、
以下の2点を主な目的として、2023年10月より実施予定となっています。

(1)軽減税率制度への対応
2019年10月に開始した軽減税率制度により、標準税率である「10%」と、飲食料品などの
生活必需品を対象とした軽減税率「8%」という、2つの消費税率が混在するようになりました。
そのため、各税率を分けた区分経理を行わなければ、事業者は適切に仕入税額を計算することが
できません。
インボイス制度は、こうした複数税率の課題を解消し、適切に課税するための仕組みです。

(2)益税の排除
益税(えきぜい)とは、消費者が支払った消費税の一部が納税されず、
事業者の手元に合法的に残る利益を指します。
インボイス制度の導入により、仕入税額控除の透明性を高めることで、この益税を排除していく
狙いがあります。

参考サイト:消費税の多段階課税の仕組み(財務省)https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/301.pdf

インボイス制度は2023年10月1日から開始されます。
現在(※2022年8月時点)は、インボイス制度開始に向けた経過措置として、
「区分記載請求書等保存方式」が適用されています。

<インボイス制度開始までのスケジュール>
・請求書等保存方式:~2019年9月30日
・区分記載請求書等保存方式:2019年10月1日~2023年9月30日
・適格請求書等保存方式(インボイス制度):2023年10月1日~

現行の区分記載請求書等保存方式からインボイス制度になることによる変更点は、

(1)登録事業者のみインボイス(適格請求書)を発行可能
(2)請求書への記載事項の変更
(3)課税事業者および免税事業者への影響

の3点となります。順番に確認していきましょう。

(1)登録事業者のみがインボイス(適格請求書)を発行可能

インボイス(適格請求書)を発行するには、適格請求書発行事業者として登録するための
事前申請を行い、「登録番号」を付与してもらう必要があります。

2021年10月に申請受付は開始しており、2023年10月1日から適格請求書を発行するには、
2023年3月31日までに申請を済ませる必要があります。

もしも登録していない事業者が適格請求書を発行した場合には、適格請求書とはならず、
その事業者に支払った消費税は仕入税額控除できないことになり、事業主は思わぬ損害を被る
ことになります。

「適格請求書についてどう対応するか」については、請求書を発行する側と受け取る側の
それぞれに注意するべきことがあります。

【請求書を発行する側の注意点】
・適格請求書に記載しなければならない事項をすべて網羅する
・請求書を紙で出力するのか、電子データで出力するのか、運用を決める
・適格請求書の発行控えをどのように保存するのかを決める

【請求書を受け取る側の注意点】
・発行者が適格請求書発行事業者かどうかを確認しなければならない
(義務ではないが、リスク回避のためには重要)
・3万円以下の請求書についても、適格請求書として保存が必要となる
・電子インボイスは電子取引データとして保存が必要となる
(電子帳簿保存法改正との兼ね合い)

(2)請求書への記載事項の変更

参考記事:適格請求書等保存方式の概要(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf

インボイス制度の開始により、請求書の記載事項に変更が生じます。インボイス(適格請求書)
の要件を満たすには、以下の記載事項が必要になります。

・書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
・取引年月日
・取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨)
・税率ごとに合計した対価の額および適用税率
・消費税額等(端数処理は一請求書あたり税率ごとに1回ずつ)
・適格請求書発行事業者の氏名または名称、および登録番号

なお、小売業や飲食店業、タクシー業など、不特定多数の顧客に対応する業種においては、
上記の要件を満たすインボイス(適格請求書)を都度発行することが困難であると
予想されます。
そのため、このような業種は適格簡易請求書を発行することが認められています。
ただし、適格簡易請求書を発行する場合でも、適格請求書発行事業者としての登録が必要です。

(3)課税事業者および免税事業者への影響
課税事業者においては、インボイス制度の開始にともない、従来の請求書関連の作業に加えて、
登録番号の照合や控除適用可否の仕分けといった作業が発生します。
そのため、今まで以上に経理業務の負担が大きくなることが予想されます。

一方、免税事業者は「課税事業者になるか否か」の判断を下す必要があります。

参考サイト:納税義務の免除(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm

参考サイト:免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A(公正取引委員会)
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/invoice_qanda.html

なお、免税事業者については一定の要件を満たす場合に下記の段階的な経過措置が適用されます。
免税事業者は、この「登録申請書」を提出することで2023年10月1日から課税事業者になることも
選択できます。

2023年10月1日から2026年9月30日までは課税仕入れにつき80%控除可能
2026年10月1日から2029年9月30日までは課税仕入れにつき50%控除可能

企業がすべきこと

インボイス制度開始に向け、企業にはどのような対応が求められるのでしょうか。
ここでは、買い手側と売り手側の視点から、企業がインボイス制度に向けて対応すべきポイントを
確認します。

【買い手(請求書を受け取る)側の企業】
・取引相手が適格請求書発行事業者か確認
・請求書に登録番号等が記載されているか確認
・適格請求書の適正保存
・取引相手(仕入先)が適格請求書発行事業者か確認

買い手企業は、取引相手(仕入先)が適格請求書発行事業者かどうかを確認する必要があります。
取引相手が適格請求書発行事業者か免税事業者かで納付する消費税額が変わってしまうため、
場合によっては取引の見直しを検討する必要があるといえます。

また、取引相手が適格請求書発行事業者として登録されていたとしても、
受領した請求書に登録番号等が記載されていなければ適格請求書としてみなされません。

さらに、仕入税額控除の適用を受けるためには、取引相手(売り手企業)から交付された
適格請求書等を7年間保存する必要があり、
また、電子データで交付された適格請求書(電子インボイス)の場合、
電子帳簿保存法で定められた要件を満たす必要があります。

なお、電子帳簿保存法で定められている要件を満たすことで、書面ではなく電子データとして
保存することも可能です。

電子インボイスには、消費税率8%と10%の取引項目が混在する請求書を自動処理ができ、
入力作業負担の軽減に。
他にも、発行では紙に出力して郵送する手間の軽減、受領後はデジタルデータを活用した
システムへの自動入力による業務効率化など、さまざまなメリットがあります。

ただ、これまで業務の電子化が進められていない事業者にとっては、
電子帳簿保存法改正への対応を含めて業務フローが大きく変わる可能性があるので、
電子化することが負担になる可能性もあるでしょう。

インボイスを電子化しようという動きが全体的に加速する中、
「紙のインボイスのままで、請求書発行事業者の登録番号だけ記載しておけば
対応できるのではないか」と
考えている事業者も一定数見られるようですが、
電子化の流れは変えられませんから、遅かれ早かれ抜本的な対応が必要であるといえます。

【売り手(請求書を発行する)側の企業】
・適格請求書発行事業者の申請・登録
・請求書の記載事項を変更
・インボイス(適格請求書)の適正保存

売り手企業は、適格請求書発行事業者の申請・登録を行う必要があります。
先にお伝えした通り、2023年10月1日からインボイス(適格請求書)を発行するためにも、
開始時期の半年前である2023年3月31日までに申請を済ませておきましょう。
登録申請を済ませたら、インボイス(適格請求書)の記載事項を満たす請求書フォーマット
へと変更します。
売り手側の企業には、発行したインボイス(適格請求書)の写しを7年間保存する必要が
あります。

2023年のインボイス制度(適格請求書等保存方式)で変更される点
買い手側が仕入税額控除を受けるために売り手側は
(1)「適格請求書発行事業者」であること、かつ
(2)「適格請求書」を発行していることが必要になります。

インボイス制度対応での重要ポイント

インボイス制度に対応する上で重要な2つのポイントをご紹介します。

(1)電子帳簿保存法の理解と対応

先述の通り、インボイス制度が開始されることで、今まで以上に経理部門の負担が大きくなる
ことが予想されます。
請求書関連の業務を正確かつ効率的に行うためにも、請求書のデジタル化(電子化)が
重要になるでしょう。
電子化された請求書であれば、国税庁が公表している「適格請求書発行事業者公表サイト」
の公表システムWeb-APIを利用し、
登録番号の照合を容易に行えるなど、業務の効率化にもつながります。

(2)電子帳簿保存法の理解と対応を進める
請求書を電子化する場合、たとえ適格請求書の記載が正しかったとしても、電子帳簿保存法
(通称・電帳法)の要件を満たしていなければ仕入税額控除を受けることができません。
そのため、インボイス制度に向けた請求書の電子化とあわせて、電子帳簿保存法についての
理解・対応が必須となります。

電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿書類の全部または一部について、電子データとして
保存することを認める法律のことで、請求書もその対象です。
インボイス制度に向けて請求書を電子化するのであれば、電子帳簿保存法への理解と
対応準備も並行して進めましょう。

参考記事:電子帳簿等保存制度特設サイト(国税庁)

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm

QWERTYが電子化をサポートします

2023年10月から開始するインボイス制度(適格請求書等保存方式)の解説と、
企業が準備すべきポイントをご紹介してきましたが、
具体的に何から着手すべきか迷ってしまう企業も少なくないでしょう。
まずは「自社の電子化」について、社内全体でどのように電子化を進めていきたいのか、
目的を明確にすることが重要で、
その上で、どのようなシステムを導入するか、業務フローをどう変えていくのかといった
具体的なことを考える流れが望ましいです。

電子取引データをデジタル保存するためのシステムやツールを導入するだけなら、
そこまで時間は必要ありませんが、
今まで紙でやり取りしていた書類を電子化して、さらに業務を円滑に回していくとなると、
システムやツールを入れる前に業務フローをどのように変えていくかを検討する期間が
不可欠です。

企業が電子取引データでやり取りする書類の中で、圧倒的に多いのが請求書です。
電子データのやり取りには電子メール、クラウドサービス、EDIなどさまざまな配送方法が
あって、取引先とのパワーバランスなども影響するため現時点ではどれかに統一することは
難しいでしょう。

また、インボイス制度を電子化で対応する場合でも、紙の適格請求書はゼロにはならない
でしょうから、紙で受領した適格請求書はスキャナ保存により電子インボイスとともに
データで一元管理することの検討も必要です。

請求書というのは、取引の最後に出てくる書類であり、そこに至るまでに、
見積書や契約書、納品書など、プロセスに応じて多くの書類の授受が発生します。
これらをすべて電子化できている企業は非常に少ないのが現状ですから、
この機会に全体の電子化についても検討できるのが理想でしょう。

書類の電子化のメリットとしては業務の効率化が挙げられますが、
その他にも、電子化することによってデータを積極的に活用できる点も大きなメリットです。
そのためには、紙の書類・電子の書類を包括して一元管理できる体制を整えることが
重要になります。

経理作業を効率化し生産性を高めるためには、まずは社内環境の整備も大切ですが、
取引先とのやり取りを「紙」から電子データに移行することで、両社にメリットがあること
を共有し、推進していくことも重要です。

単に法改正や法制度に違反しないようにと表面的な対処に追われるのではなく、
社内の電子化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進という広い視野を持ちつつ、
電子帳簿保存法改正やインボイス制度に対応していきたいですね。

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すべてを1つのシステムでカバーするのではなく、すでに利用している請求書発行システム、
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