7戸に1戸が空き家!家余りの課題をビジネスチャンスに
日本全国で空き家は一貫して増え続けており、 5年に1度行われる総務省の「住宅・土地統計調査」によると 2018年の空き家数は849万戸。 30年前の1998年から倍以上も増加しており、 空き家数を総住宅数で割った空家率は13.6%と、 およそ7戸に1戸が空き家という水準に達しています。 戦後から1960年代まで深刻な住宅不足に悩んだ日本は、 立法措置まで講じて住宅新築を進めてきました。 その結果、1973年には全都道府県で住宅不足が数字上は解消しましたが、 年間で百数十万戸の高水準の新築が2000年代まで続きました。 日本ではすでに住宅総数(約6200万世帯)が総世帯数(約5400万世帯)を 上回っていて、単身世帯の増加によって、人口減でも世帯数は40万~50万 のペースで増えていますが、同時に毎年80万~90万戸の新規住宅が 着工されていて、住宅ローン減税をはじめ、政策面での支援も相変わらず 手厚いのが現状。 人口減が推計されても新築中心の住宅産業を育成する経済政策を 大きく変えてこなかったツケが回ってきていると専門家は見ています。 2015年の「空家等対策の推進に関する特別措置法」施行により、 空き家の増加ペースは鈍化したのですが、あくまで一時的な現象であると 考えられています。 国立社会保障・人口問題研究所は、 2023年は日本の世帯数が5419万とピークを迎え、減少が始まる節目と みており、人口が減っても長寿化や生涯未婚率の上昇から一人暮らしが広がり、 世帯数だけは増えてきた状況に転機が訪れるとされています。 野村総合研究所の試算によると2023年を境に空き家も急増すると見込みで、 約1000万戸も余る時代が到来、さらに、2038年には約2303万戸に達し、 空き家率が31%まで上昇する可能性があるとみていて、 言い換えれば、3戸に1戸が空き家、「両隣のうち片方が空き家」という 社会が到来と予測されています。 もちろん国も手をこまぬいてきたわけではなく、前述の通り、 2015年には空き家対策特別措置法が全面施行。 管理不全な空き家に対しては、行政が立ち入って調査ができたり、 所有者の確認など個人情報を取得しやすくなり、 「特定空家等」に指定されると、軽減されている固定資産税などの特例から 除外され、最後は行政代執行も可能など、ペナルティ的な要素も含んでいました。 地方も早くから動いており、市区町村ベースでは、 2010年の埼玉県所沢市を筆頭に、空き家条例が次々成立。 各地で空き家バンクも設立され、空き家を売りたい・貸したい人と、 空き家を買いたい・借りたい人を仲介する試みも広がりつつあります。 ただ、これまで利用が活発に進んでいたとは言いがたく、 法制度の整備などで空き家への関心は高まったものの、取り組みが進んでいない のが実情。 とくに空き家バンクでは、登録する物件数が少ない、居住希望者のニーズと マッチしない物件が多い、などの課題があります。 また、営利で行う民間の不動産業者と違い、空き家バンクは仲介に関与せず、 当事者同士で交渉する必要があるなどの問題も明らかになり、 空き家を通じ移住を促進したい地方と、あえて望んではいない都市との温度差も 指摘されています。 2021年に閣議決定した住生活基本計画によれば、2018年時点で 居住世帯がある住宅は約5360万戸。 うち約700万戸は耐震性が不足し、新耐震基準の家でも約3450万戸は 省エネルギー基準を満たさないという結果になっており、 基本的性能が劣る物件は敬遠され、国内の住宅市場で既存住宅のシェアは 約14%と、80~90%の米英と大差がついています。 既存住宅が低性能・不人気のまま、空き家の増加に拍車がかかっています。 では、人口減時代の家余りにどう対応すればいいのかという課題ですが、 ひとつは既存住宅の有効活用で、日本では一部の高齢者や一人親世帯が 住宅確保に苦労する例があるため、 行政の内部で住宅と福祉など各分野で情報が共有されない状態の解消が 進めば既存住宅の活用の余地はまだあるという意見があります。 もうひとつは解体という選択肢で、 解体工事会社と空き家の所有者をマッチングする株式会社クラッソーネ (愛知県名古屋市)は1万件以上の成約実績を持っており、 2021年には蓄積データを分析し、解体費用を算出するシミュレーターの 自治体への提供も始めており、国土交通省の支援事業に2年連続で選ばれ、 約30の自治体が導入しています。 空き家を解体して更地にすると原則、固定資産税が高くなるため、 国は税制などで個人が解体を進めるインセンティブを整えることも必要だ という意見もあり、2015年に施行された空き家対策特別措置法では、 特に問題が大きい空き家に対しては、行政代執行による取り壊し(除却) なども可能とするといった対策を進めています。 行きつくところ、空き家問題とは、 国の住宅政策が限界にきていることと重なっていて、 高度成長期からの「造りっぱなし」の政策から、人口減少に転じてもなお 発想が抜け出し切れていなく、国を挙げて住宅リストラに取り組まなければ、 余剰住宅は空き家のまま朽ちていくという状態になっているといえます。 空き家問題は「老いる日本」が向き合い、 少しでも解決せざるをえない大問題であり、 マンションの住み替えなどを別にすれば、多くの人は買う経験はあっても 売る経験は少ないので、不動産業者としては、顧客目線で対応する ことで大きなチャンスを得られるのではないでしょうか?