不動産事業者の参入も。急増する「ゴースト(幽霊)レストラン」。
2022/07/27
料理宅配アプリで注文する際「こんなお店、うちの近所にあったっけ」と思った経験はないでしょうか?。 その正体は、客席を持たず宅配に特化した「ゴースト(幽霊)レストラン」。 看板も客席もないため、ゴーストの名は、店が「幽霊のように目に見えない」ことに由来していて、 新型コロナウイルス禍で急増しています。 中には、宅配に対応する飲食店の1割強を占める地域も出てきており、 鶏肉料理や丼物など数十の業態を用意したフランチャイズチェーン(FC)が登場して、参入が容易になったことも背景にあり、 新型コロナウイルス禍に苦しむ飲食店主らが「副業」として加盟し、飲食宅配市場の拡大に弾みをつけています。 同じ厨房で「多店舗展開」できるなどゴーストならでは特徴が、生産性・効率性の向上につながっています。 FC本部が、商圏の客層を分析してオーナーに適切な業態とレシピを提案し、注文受付から配達員へ商品を渡すまでのオペレーションを支援することで、 通常4~6カ月かかる開業までの時間を約1カ月に短縮できているそうです。 2022年1月には、コンビニ大手のローソンが店内厨房を使って1000店にゴーストレストラン事業を広げる方針を掲げました。 大企業の本格参入として注目されたこの事業には、FC事業を展開するその名も「株式会社ゴーストレストラン研究所」が携わっています。 コロナ禍で大打撃を受けた飲食店は、ゴーストレストラン研究所のようなフランチャイザーの力を借り、 「副業」として別の店名でゴーストレストランを始める飲食店も多いそうです。 フランチャイザーの一つで「鶏あえずタンパク」など約80業態を持つWiaas(ウィアーズ、東京・新宿)では、 全国約150の加盟者の約8割が既存の飲食店。初期費用は無料とし、月商の10%をロイヤルティーとして受け取るしくみとなっています。 一方、不動産事業者もゴーストレストランの関連事業に乗り出しています。 野村不動産は飲食店ビル「GEMS(ジェムズ)田町」に、ゴーストレストランに特化したシェアキッチンを設けました。 来店客から調理の様子が見えるオープンキッチンで、3業者が合計35の業態を運営していて、配達員が配達番号を入力すると扉が開く商品ロッカーも設置されています。 2021年の料理宅配市場は約7909億円と2019年の2倍近く、料理宅配アプリの2022年4月の利用者数は1282万人で、14カ月連続で1000万人を超えているとのこと。 同じ設備で他の業態も展開できるため、追加出店や設備投資のコストをかけずに売上高を伸ばすことができ、 働き手の有効活用も可能であると評価されているゴーストレストラン事業。 柔軟な発想で新たなビジネスを展開するお手本にしたいですね。