「健康になる街」スマートシティー柏の葉
三井不動産は、5万人が暮らす千葉県柏市の「柏の葉」エリアで、
健康をテーマに住民参加型の街づくりをはじめています。
住民に健康アプリを提供し、個々人の利用データを収集。
それをもとに企業や周辺の大学・病院が新サービスを開発し、
再び住民に提供。
データとサービスを循環させて「住めば健康になる街」を実現し、
継続的に価値を生み出すそうです。
柏の葉は明治時代に三井家が開墾。
戦後は米空軍基地として使われていましたが、後に返還されました。
三井不動産は、2000年代前半からデジタル技術を活用した
スマートシティとして開発に着手。
マンション3400戸を建設し、商業施設「ららぽーと」やホテル、
オフィスビルを運営しています。
2020年11月に立ち上げた、ポータルサイト「スマートライフパス柏の葉」
で、地域住民に健康アプリを提供しています。
つくばエクスプレス線「柏の葉キャンパス駅」から半径2キロ圏内の
住民なら、三井不動産の物件に住んでいなくても会員登録が可能です。
現状で4つあるアプリは「メディカルノート」「カロママプラス」など。
一般のアプリストアでも配信されており、一部は有料サービスですが、
柏の葉の住民は無料または割引価格で使用でき、 三井グループの
ネット通販で利用できるポイントも付与されます。
各アプリの利用データを連携させれば、
食事や運動が健康に及ぼす影響など踏み込んだ分析が可能になります。
たとえば、昼食をスマートフォンで撮影してアプリに記録すると、
人工知能(AI)が画像分析してカロリーや足りない栄養を助言してくれたり、
別のアプリで毎日の歩数や血圧も管理。
体調が優れなければオンラインで医師に相談もできます。
登録住民は現在1100人で、データの絶対量としてはまだ小さいのですが、
多様な企業が関心を持っており、 製薬、食品、エネルギーなど
約60社の参加を見込んでいるとのこと。
その理由は、柏の葉に拠点を構える東京大学や
国立がん研究センター東病院などの存在があります。
参加企業は、最新の知見や実証の場の提供を期待しており、
また、住民から取得したデータを新商品や新サービスの開発に
活かそうとしています。
2021年7月に参画したNTTデータは、まず健康管理アプリを
スマートライフパスの登録住民に提供。
現在、柏の葉の一角で、三井不動産と国立がん研究センターが、
病院併設型ホテルの建設を進めていますが、 NTTデータは
スマートライフパスに登録しデータ提供を承諾した患者を対象に、
ホテルの部屋に設置された血圧計や、血中酸素濃度を測る
パルスオキシメーターなどでデータを収集するとのこと。
同社は保険会社と組み、健康状態に合わせた保険商品を開発する考えで、
どんなデータが有効か、がん研究センターなどの医師の意見も反映する
とのこと。
また、ゲノム解析の第一人者、鈴木穣・東大大学院教授は、2021年春、
柏の葉周辺に住む50人の血液を採取。
最新の解析手法で健康状態や病気の予兆の把握を試みました。
今後はスマートライフパス上で提供し、1千人規模に検査人数を増やす方針
だそうです。
サービスを拡充し、参加住民を増やしてデータを厚くし、
一企業でできないことを実現できる柏の葉。
三井不動産は同様のモデルを豊洲や日本橋で展開することも検討しており、
街づくりをソフト面から進化させ、企業の集積や物件価値向上に繋げて
いこうとしています。
世界各地で進むスマートシティ計画の大きな課題が、個人情報の適正管理や
サイバー攻撃対策。
三井不動産は電子政府の先進地であるエストニア(注)にも社員を派遣し、
システム設計を工夫したそうです。
また、データベースが一つだと、大量の情報が一度に奪われるリスクが
高いため、 データはサービスごとに分散管理し、必要に応じて連携させる
仕組みを取っているとのこと。
住民のプライバシーが守られつつ、便利で健康に過ごせる
スマートシティ計画が、 多く進行していくといいなと思いますが、
そのためには、データの活用が今後のキーになります。
住民のプライバシーが守られつつ、便利で健康に過ごせる
スマートシティ計画が、 多く進行していくといいなと思いますが、
そのためには、データの活用が今後のキーになります。
しかし、現状はどこの企業も独自の大量のデータを持っているのにも
関わらず、宝の山を眠らせてしまっている状態。
そこから生まれるサービスやサポートについて
今一度考えてみてはいかがでしょうか。
(注)国民の98%が電子IDカードを所有。
政府は国民の名前や住所、生年月日などの基本情報のほか、
どの分野の教育を受けているのか等の情報を把握することが可能。
国民は政府が提供する様々なオンライン行政サービスを受けることが
できる。